2011-01 Experiencing Life in Noto - 能登での田舎暮らし体験

day 70.3 予想外の日本滞在約20年 「ペンキ塗りは得意、3ヶ月で輪島塗をマスターできると思った」と漆芸作家スザーン・ロスさん

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スザーンロス

能登・輪島市(石川県) – Suzanne Ross(スザーン・ロス)さんは、石川県漆芸技術研修所で輪島塗を学び卒業したら、イギリスに帰国する予定だったが、漆塗りを極めることはそう簡単ではなかった。

3ヶ月しか滞在しないつもりが、20年以上になってしまったのよ!」と、スザーンさんは幸せそうに笑う。(前回の話しはこちら

スザーンロス 漆塗り作家【石川県輪島市 牛舎(ぎゅうしゃ)を改造して作ったアトリエ】

使えば使うほど味がでる漆塗

「漆器はもったいないから特別な時にしか使いたくない」というのがぼくのイメージだ。

スザーンさんは、「漆塗で出来ているモノは、使えば使うほど、“味”が出るのよ。お寺の庭園に苔(コケ)が生えると“味”がでるようにね」と話す。

例えが日本的でわかりやすい。プラスチック製品のモノは傷がつけば、「ただの傷」で終わってしまう。

「高いものこそ、使い道を豊富にすべき。漆器は“生活の質”を向上させる

品質にかかわらず、自分の好きなモノを使うことで、満足感が得られ気分が良くなれば、それがベストよ。それに、人は壊れたり傷つきやすいものよりも、高品質で長持ちする1枚を選ぶ」と続ける。

「人間より長持ちするよ」と笑いながら説明を補足する夫のクライブさん。

でも、なぜ日本へ?

スザーンさんのアートはまず塗り物から始まった。「塗り物は全て自分でできる」

ロンドン(イギリス)で開催された江戸時代の工芸展示会で、漆塗の素晴らしさを見て感動した。

これがきっかけで、日本で本格的に勉強したいと思い、スザーンさんは1990年に来日した。

「勉強するならベストから学びたい」と知人に相談し、漆塗りで有名な輪島を勧められたことがきっかけで、輪島塗の勉強が始まった。

来日後、3ヶ月で輪島塗をマスターできると思ったが、輪島塗は3ヵ月以上に深かった。

そして続けること20年以上…。想定以上の年月だった。“想定”どころではない…

当時、20年もかかるって聞いていたら、辞めていたわよ!ペンキ塗りは得意だし、半年でマスターできると思ったわ」と、スザーンさんは大笑いしながら話す。

 

手間がかかっている輪島塗の工程

輪島塗は、漆を塗って、金箔などでデザインするだけでは終わらない。

輪島塗の大まかな工程数は16ほどあり、半端なく手間がかかる作業が沢山あるそうだ。

輪島塗 朝市【石川県輪島朝市の通りにあった輪島塗】

輪島塗は分業で、工程ごとに職人がいる。塗師屋が、商売人や各工程の分業をまとめる“プロデューサー役”を担当する。

作品の元となる木を形として削り取り乾燥させる「荒型(あらがた)」

漆を塗る前に荒型を削る「木地」づくりや「研ぎ」

漆を塗る「中塗り(なかぬり)」や「上塗り(うわぬり)」の作業

作品にデザインを描く「蒔絵(まきえ)」など多くの工程がある。これら各工程は、更に細分化されている。

そして、工程の一環には、蒔絵として上塗りされた木地に絵を描く前の下書きデザインをスケッチしたり、付加価値について考えるなどして“工夫”を追加する作業があるのだ。

スザーンロス【石川県輪島市 Suzanne Ross(スザーン・ロス)さんは、丁寧に輪島塗について説明してくれたり、自身についても語ってくれた】

 

輪島塗の難しさとは

「輪島塗の全てを学びたい」と思い来日したが、そう簡単に漆塗を教えてはもらえなかった。

ようやく石川県の輪島塗の養成機関「漆芸術研修所」にも通い始めることができた。

9年間だ。しかし、9年間続けて研修所で勉強したわけではない。

その間、自身で作品をつくり個展を開催したり、自分にとって足りない技術を磨くために、もう一度養成機関に通った。

石川県出身の人間国宝/重要無形文化財保持者の大場松魚(おおば しょうぎょ)さん、小森邦衛(こもり くにえ)さんの指導も受けた。

「人間国宝」の人たちは、国宝をつくるための技法を保持する人たちだそうだ。

 

就労ビザでの日本滞在から永住権を取得。帰国する必要がなくなり、長期滞在して、輪島塗をマスターすることの計画を考え始めたと言う。

当初、3ヵ月でマスターして、イギリスで漆塗を継続する予定だったが、輪島塗の工程数が多すぎた。さすがに20年かかるとは思っていなかった。

スザーンロス【石川県輪島市 輪島塗と日本に来た時のことについて語るスザーン・ロス】

一つの工程を学ぶのに、3年弱かかるとも言われているそうだ。

計16工程ある輪島塗、一工程を終わらせるのに、1年かかることもあるそうだ。

スザーンさんは、輪島塗の全行程をマスターしたかなりの勉強家/努力家である。

ぼくらは、去年(2010年10月)、輪島へ行ったときに感じたことを正直に伝えた。(そのときの話しはこちら

「輪島って元気がないですよね… 輪島の朝市を通ったときに感じました」と(続きはこちら

<前回のストーリー 『day 70.2 漆芸作家スザーンさんと、クライブ・ロスさんとの出会い ~ 別れるか、日本へ行くかの選択 ~』>

<次回のストーリー 『day 70.4 輪島塗の現状 ~ 輪島に残れない輪島塗に熱心な次世代 ~』>

 

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1979年1月生まれ、東京生まれ鎌倉と米オレゴン育ち。鎌倉の中学校卒業後、オレゴン州の高校と大学を卒業。現在、石川県鳳珠郡穴水町岩車在住。ソニーやPR会社で広報業務に約10年間携わり、2010年10月、ライフスタイルの選択肢を増やすべく、日本の田舎/地方を中心に、テント・寝袋・自炊道具などを担いだバックパッカー旅を開始。以後2年半にわたり旅を続ける。「テント」ベースから、2012年5月以降は「バン」ベースのバックパッカーになりバンライフ開始。2013年5月、人口約100人の限界集落 能登半島・石川県穴水町岩車に移住。現在は、「田舎への旅」と「田舎でのライフスタイル」の二つを軸に、田舎旅やライフスタイルの情報発信、都市部の人たちが能登の暮らしを体感できる「“ざっくばらん”な田舎ライフスタイル体験」の提供を行なうほか、東京のスタートアップ/ベンチャー企業、移住先・能登や静岡県の中小企業の広報サポート、地域活性プロジェクトサポートにもリモートワークで従事。また、ブログやウェブ制作、写真、執筆活動なども行なっている。移住先で自宅がある岩車の隣の地区 穴水町川尻では、シェアハウス・サテライトオフィスなど多目的・多機能の「田舎バックパッカーハウス」、そこに併設する“住める駐車場”であり長期滞在可能な車中泊スポット「バンライフ・ステーション」も運営。現在、東京の“バンライフ”のCarstay(カーステイ)で広報責任者として関わりつつも、モノのレンタルや借り放題事業を行う「flarii(フラリー)」、“遊び”を取り入れ人間関係“つながり”をリモートで構築する「バヅクリ」、静岡県島田市で幻のきのこ“はなびらたけ”「ホホホタケ」を生産する大井川電機製作所、石川県輪島市では国産漆だけでアート作品をつくる“芯漆(しんしつ)”の山崖松花堂などの広報を担当する。移住先・石川県穴水町岩車で育てられた牡蠣の販売もサポートする。

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