キャンピングカーの展示会やショップに足を運ぶと、ハイエースがベース車両の「大人が立てるキャンピングカー」に出会うことは少ない。多くのハイエースベースのキャンピングカーは、室内高が足りず、中腰での移動を強いられるものがほとんどだ。
だが、実は「最初から立てる」ことを前提に作られたハイエースがベース車両のキャンピングカーが存在することを知っているだろうか?
ファンルーチェのセレンゲティなど、ハイエースの後部がカットされ、別途FRPの箱モノを載せて架装したキャンピングカーなどはある。ぼくがこの記事で書いている「最初から立てる」とは、後部などの外装をカットして架装せず、ハイエースの車体そのままを活かしたキャンピングカーのこと。
代表的なのが、トイファクトリーの「ALTAMODA(アルタモーダ)」だ。これは一般的なハイエースをベースにしているわけではない。
【トイファクトリーのキャンピングカーアルタモーダ(右)は救急車でも使われるスーパーハイルーフがベース車両となっているのでルーフは架装されていない。左はミドルルーフのハイエースのルーフを切り、別途ルーフを載せた車両】
救急車などに採用されるスーパーハイルーフのハイエースをベースにしていて、天井を切ってポップアップを追加するのではなく、最初から“立てる室内空間”が確保されている。
そもそも、スーパーハイルーフはハイエースのパンフレットにすら載っていないので、その存在を知る人は数少ないのではないだろうか。
このアルタモーダ、ルーフ部分のシルエットはやや特殊だが、内装デザインはトイファクトリーらしくまとまりがある。車内に入ってみると、大人が自然に立てる解放感と、断熱・換気性能を重視した快適性が印象的だ。
冷暖房効率にも優れており、四季を通じて車内で快適に過ごせる構造となっている。
一方で、キャンパーアシストが手がける「RICH(リチ)」シリーズも、同様に“立てるハイエース”として注目されている。こちらもベースはスーパーハイルーフ。もともと救急車仕様として作られたボディを活用し、広い天井高をそのまま活かした車内設計となっている。
両モデルに共通しているのは、天井高だけでなく、断熱や遮音といった居住性の部分にも力を入れているところ。単に「立てる」という物理的な空間だけでなく、「立って快適に過ごせる環境」が整っている。
一般的なハイエースの天井高は140〜160センチほど。対して、スーパーハイルーフは約190センチ前後あり、大人でも腰をかがめずに移動できる。このわずかな違いが、車内での快適さに大きく影響する。
ポップアップルーフを使えば立てる車は他にもあるが、就寝スペースとして使われることが多く、日常的に立ち上がれる構造とは異なる。また、ルーフ部分は断熱や防音性能が弱くなる傾向にあり、季節や天候によっては使いにくさを感じる場面もある。
その点、アルタモーダやリチは最初から“人が立つこと”を前提にデザインされている。車内で料理をしたり、身支度を整えたり、作業をしたりといった、生活の基本動作が無理なく行えるのは大きなメリットだ。“背伸び”したくなるような場面でも自然に動ける。
【キャンパーアシストのリチもスーパーハイルーフがベース車両となっている。写真は製造途中段階のリチ。キャンパーアシスト社にて】
もちろん車高はそのぶん高くなる。スーパーハイルーフは約230センチ前後あり、立体駐車場や都市部の低いガレージには入れない場合もある。アルタモーダの場合、マックスファンやソーラーを付けると、高さが262センチにもなる。だがそれを差し引いても、「立てる」ことの快適さは代えがたい。
見た目のインパクトやラグジュアリー性を追求したキャンピングカーも魅力的だが、長く使うことを考えるなら、「立てる」ことの快適さは軽視できない。
キャンピングカーにおける「立てる」という要素は、単なる贅沢ではなく、機能的で本質的な価値と言える。
だがだが、残念ながら、現在、キャンパー特装のハイエースのスーパーハイルーフは生産停止となっていることから、両キャンピングカービルダーでは、アルタモーダとリチの注文受付を停止している状況。
レアなキャンピングカーとなっていることから、中古市場でもなかなか出回っていない。
【トイファクトリーのバーデン・アルタモーダは架装なしで中で立てるスーパーハイルーフのハイエースがベース車両となっている】
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