これはつい最近あった北海道 知床での「羆(ヒグマ)」遭遇ストーリーの最終話(一話目はこちら)。ここに綴っているその時の想いは、全て秒速単位で感じていたこと。(前回のお話しはこちら)
北海道のヒグマ亜種は、エゾヒグマとも呼ばれる。
さて、ここで少しだけ、ヒグマの解説を入れる。ヒグマ(学名: Ursus arctos(ウルスス・アルクトス))はクマ科に属する陸棲哺乳類。
日本では北海道のみに生息し、日本最大の陸上動物。エゾヒグマと呼ばれ、ヒグマ種の亜種。
ヒグマはホッキョクグマと並びクマ科では最大の体長だそうだ。ホッキョクグマとDNA上かなり近い関係にあるそうだ。
ちなみにハイイログマ(グリズリー)もヒグマの一亜種で、日本のヒグマと変わらない大きさ。アラスカとロシアに生息するヒグマ亜種が最大級とされている。ヒグマの体長は約2メートル、体重は約300-500キロ。これまで捕えられた野生のヒグマの最大体重はアラスカのコディアック島の1,134キロ。
知床半島は、北海道の東部、斜里町と羅臼町にまたがった半島。南側には国後島が位置している。知床半島は1964年に国立公園、2005年には世界遺産に登録された。
知床半島の見所はやはり『大自然』とその中に住む『野生動物』
主な名所は、カムイワッカの滝(別名:カムイワッカの湯の滝)、知床五湖、オシンコシンの滝、知床岳、知床硫黄岳、羅臼岳など。羅臼には、『熊の湯』という温泉も沸いている。
エゾシカ、ヒグマ、キタキツネなどの野生動物、シマフクロウやオジロワシの天然記念物に指定された動物、漂流とともにシベリアから辿り着くオオワシなどの野鳥も生息している。シマフクロウは100羽もいるかわからないほどの絶滅危惧種で、滅多に遭遇することはないそうだ。
海には、アザラシ、トド、クジラなども生息している。今回、ぼくが撮影した動物は、エゾシカ、ヒグマ、キタキツネ、エゾリス、シマリスなど陸の野生動物、海ではマッコウクジラ、イシイルカ、シャチなど。
さて、前文が長くなったが、ここでヒグマの話しに戻る。
再び静かに斜め前に回り込む。まだ遠くてわからないが、ヒグマはきょろきょろし始めて、若干、ぼくの方を見ているように見える。
「ヒグマは日本の陸地で最も危険な動物」と考えるより、「写真を撮りに行く」の考えが先行しすぎてしまった。「大丈夫だろうか…」という疑問はあったが、滅多に遭遇しない動物なので、その時の自分は写真を撮ることに夢中だった。(※本来はすべき行為ではないので、絶対に真似はしないでほしい)
北海道に住む人や知床に何度も来ている人でも、野生のヒグマに一度も遭遇しないぐらい珍しいケースなのだ。車を運転している北海道出身で何年も知床半島に来ている二階堂さんでも、これまで一度も野生のヒグマに遭遇していない。今回、二頭のヒグマと遭遇した。おそらく母熊と小熊だろうか。
焦げ茶、黒、灰色が混ざった大きいヒグマを撮影し、黒色のみで一回り小さいヒグマを撮影し始める。しかし遠すぎるし、歩きが早い。ヒグマの周辺には、木や大きな葉っぱの植物など、障害物が多く、焦点を合わせることも難しい。
いくら望遠でも、そこまでの至近距離までは近づけないので、遠くからブレがなく安定した撮影は難しいのだ。ヒグマの歩くスピードも速い。「もう少しゆっくり歩いてくれ…」と一人つぶやくが、そんな声が届くわけがない。
より遠くにいる小熊を撮影しているうちに、大きいヒグマを見失ってしまった。あたりを探すと、だんだんとこっちに近づいてきている。完全に気付かれた。
二度目も静かに回り込んだ後(回り込んだとは言っても距離はかなりあけている)、ヒグマはこっちに気づいていて、威嚇されているように見えたのだろう。ヒグマが警戒し始めていたのだ。
小熊を撮影しているときに、いつの間にか、下から傾斜を上り、ぼくの方に向かってゆっくりと上り始めていた。ちなみに小熊の首には発信機がついた輪、耳には黄色のクリップがされていた。知床の世界自然遺産の調査関係団体が、生態系調査のために取り付けたと思われる。
小さいほうのヒグマを撮ろうとしていたので、気づかなかったが… 気づいたときには…大きいほうのヒグマが、(実際はもっと遠かったとは思うが)ぼくの15メートルぐらい斜め左前まで接近していた。ヒグマが接近してくる足音は全くなかった。
ある地点で、ヒグマは止まってぼくをじっと見ている様子。
傾斜で少し距離があったので、はっきりはわからないが、若干半立ち状態に見えた。
「死んだふり?」「睨み返して、コートなどをビラビラさせて、自分を相手のヒグマよりも大きく見せる」など、以前教えてもらった熊の対応なんて考えている余裕はなかった。
この距離になると「全速力でクルマに逃げ込む」しか考えられない。
「これはやばい…追っかけられるかもしれない」の文字のみが、瞬間的に頭を過った。撮影から、一瞬にして「逃げる」モードに、全身のギアが変換された。顔も一瞬にして青ざめた。全身で「焦り」を感じた…
ぼくの側には二階堂さんのハイエースがある。二階堂さんは常にぼくの側を走ってくれていて、助手席のドアも開けっぱなし状態でクルマをつけていてくれた。
全速力で車に向かい飛び乗る前に、「もしクルマまで、追っかけてきそうだったら、クルマを中心にぐるぐると逃げ回るしかない」と瞬間的に考えていたことも記憶している。
ヒグマと0.5秒ほど間近で睨みあい(実際、こっちを睨んでいたのかはわからないが…)、クルマまでの短距離を全速力。
軽く走るほど余裕はない。全速力で走り、慌ててクルマに飛び乗ったのだ。ヒグマを撮影するのも初めて。あそこまで慌てて、全速力で逃げたのも初めてだった。追っかけられはしなかったが、追っかけられる手前だったのかもしれない。
クルマに乗った瞬間、結花と二階堂さんは、「すごい表情で戻ってきたね」と笑っているが、「もう何やってんだ」的な感じで唖然となっている。結花は「もう心配するじゃない」などと心配していそうな言葉を発するが、「大きいほうのヒグマの写真は撮れた?」と…
本当に心配していたのだろうか…
クルマの中ではしばらく、ヒグマとの遭遇話しばかりだった。
そして、こんなことがあったにも関わらず、ぼくは「また熊いないかなぁ」と引き続き、車から頭を出してヒグマを探す。
カムイワッカの滝に行った後、ぼくらが遭遇した野生動物は…(続きはこちら)
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