能登・輪島市(石川県) – “輪島塗を復活”させるには、デザインや技術を進化させなければいけない。(前回のストーリーはこちら)
スザーンさんは輪島塗をただ単に学んだだけではない。
独自の付加価値で新たなモノをつくる
独自の付加価値をつけて、オリジナルの技術とデザインを追加している。
例えば、お椀。お椀の木地全てを輪島塗にせず、半分を漆で塗り、半分は独自の塗方、もう半分は木を活かしたデザインで完成させる。“Power of Wood(木の力)”を感じさせるものを作る。
【石川県輪島市 Suzanne Ross(スザーン・ロス)さん製作中のお椀】
“木”本来の良さを前面に出す
木の“重み”も残して、“木の力”も感じられるようにデザインしている。
これがスザーンさんならではのやり方。従来の輪島塗には仕上げないのだ。
スザーンさんは、輪島塗の型に“はまっていない”、「輪島塗の“上”にいる」と自信を持って話す。
一つの作品を作るのに、約10ヶ月から1年もかける。
また、“モノの魂”、“自然や漆のエネルギー”を感じて作品を開発することを心がけている。
良いモノができない。スザーンさんは常に木のエネルギーを作品に出すことを心がけている。
それを背景に、自身を自然の中に溶け込ませる。
身近な生活において、魚、野菜など本当の“自然の味”にこだわり、食べたりしているそうだ。
意識して、自然と自身を調和させてあらゆるものを感じている。住んでいるところも、森の中にある旧・牛小屋だ。
【石川県輪島市 Suzanne Ross(スザーン・ロス)さんが制作中のお椀】
「最近、コストを下げた安価なモノが増えて、人は見比べができなくなってきている」とスザーンさんは語る。
ウール、綿などの“自然な素材”を使った衣服が減ってきているような気がする。
今では合成された素材のポリエステルなどがメインに使われている衣服が多く、“自然”な選択が少なくなってきている。
スザーンさんが作ったお椀にはレースやウズラの卵の殻が活用されたモノもある。
「レースでモノをつくれないかな?」「厚みのあるうずらの卵を使ってみよう」という発想。
【石川県輪島市 お皿の外側にレースを活用したSuzanne Ross(スザーン・ロス)さんの漆芸品】
スザーンさんのデザインは、既存の輪島塗の枠にとらわれないデザイン。これがスザーンさんの特長のように思える。
「スザーンの作品は、3Dのテキスチャーが蒔絵にある。様々な独自技法を混ぜるので、他の蒔絵師にはない特長ある仕上がりになる」と、夫のクライブさんは言う。
デザインを冒険するスザーンさん
スザーンさんの作品からは、これまでの輪島塗以上のモノを感じられる。
ぼくら素人の目でも違いがわかるのだ。 スザーンさんは“デザインを冒険”している。
スザーンさんは、工程を活かした様々な技法をトライする。
「漆でなにができるか。これもできるかな?」「この漆塗デザインに、こんな工夫を加えたらどうか」という自由なデザイン研究の“冒険心”や「自分にとってデザインのルールがないからこそ」新たな独自の技法や作品が生まれてくる。
【石川県輪島市 Suzanne Ross(スザーン・ロス)さんのアトリエ(旧・牛小屋)のワークスペース。無駄なものがなくすっきりしている】
日本の文化や漆塗は20年前まで、スザーンさんの中にはなかった。
これまで自身になかった輪島塗の文化を取り入れたからこそ、固定概念にとらわれない“自由なデザイン”の研究ができ、新たなデザインが生まれてくるのだ。
沢山の日本の伝統工芸品の選択を見ずに、プラスチック製品だけを見て過ごすのはもったいない。
確かに、ぼくらの時代、安さや流行りのブランドに目がいってしまいがちだ。
日本の伝統技術から目をそらしている、今目の前にあるモノしか見ない。(続きはこちら)
【石川県輪島市 Clive(クライブ)さんとSuzanne Ross(スザーン・ロス)さんと温かい“牛小屋”アトリエで、3時間ほど話した】
<前回のストーリー 『day 70.4 輪島塗の現状 ~ 輪島に残れない輪島塗に熱心な次世代 ~』>
<次回のストーリー 『day 70.7 輪島塗を活性化させたい漆芸作家 スザーン・ロスさんの取り組みは?』>
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