徳島県勝浦郡上勝町 – さて、上勝と言えば、「葉っぱ」を想い浮かべる人たちが多いと思う。前回、紹介した晩茶の香ばしさが潤う「神田茶の里」も、確かに「葉っぱ」からなる生産物だ。(そのストーリーはこちら)
【徳島県上勝町 – 山から湧水をひいて生活水に活用している。いつも笑顔の上勝の山田キミちゃんに水源まで連れてってもらったことがある】
一方で上勝は、「棚田」や、自然や人の体を形成する重要な生命資源である「水」の町でもあるのではないだろうか。「市宇の棚田(いちうのたなだ)」には、名水「天上の泉」がある。
また、美味しい水からできた棚田米、純米吟醸原酒、米焼酎もある。民家は、山から湧水をひいて、湧水を生活水として使っている。
山を越えて隣町の神山町(かみやまちょう)でもそんなライフスタイルを送る人たちが多い。
美味しい水が手元にある生活…羨ましいばかりである。ぼくらは山から水をひくライフスタイルを“まだ”送っていないが、上勝のような田舎へ行くときは、持っているボトル満タンに天然水を入れる。
せめて“イナ旅”の最中ぐらいは美味しい水を飲みたい。また別途紹介するが、奥へ奥へと進んでいくと、上勝には滝も多いのだ。
ここ上勝町の田舎は、豊富な地域資源をうまく、あらゆる事業で活かしている。また、それら“地域資源”を活かした事業を旅行ツアーの中にも組み込むなどして、うまく観光へも結び付けている。
ようやく「樫原の棚田」に到着 棚田の竹中ファームへ
さぁ、まずは、「樫原の棚田」の一つ目の水車があるところへ。
その後、2011年10月下旬、株式会社いろどりでのインターンシップをとおして出会った「樫原の棚田」農家の一人 竹中充代(たけなか みつよ)さん宅(標高550メートル)へと向かう。
果たして、ぼくらのことを覚えているだろうか?
【徳島県勝浦郡上勝町 – 「樫原の棚田」 竹中ファーム。ここも映画「人生、いろどり」のロケ地の一つ。竹中充代(たけなか みつよ)さん宅(標高550メートル)宅で旅先のちょうちんが壁にかかっている】
実は竹中さん宅の入口の坂が、映画「人生、いろどり」で都会の中学校用務員を退職して上勝へ戻ってきた尾関路子(中尾ミエさん)の母親が元気よく、ニコニコと笑顔で、一人乗り電動車両のシニアカーで葉っぱを運ぶシーンが撮られた場所だ。
ちなみに、最近、上勝が大々的に舞台になったのは映画だけでない。
かなりニッチなイベントだが、2011年10月27日(木)~29日(土)の間、「緑の階段 ~みんなで守ろう 日本の棚田~」をテーマに「第17回 全国棚田(千枚田)サミット」を開催した場所が上勝でもある。
これからの棚田のあり方について語る重要会議だ。ぼくは、そもそもそんな棚田に関するサミットがあることに驚いた。こんなレアな田舎の大規模サミット…聞いたことあるだろうか。
「樫原の棚田」の笑顔が素敵な竹中充代(たけなか みつよ)さん。日々、“対自然”で忙しい体力仕事。でもゆったり、楽しそうな忙しさの雰囲気が常にある竹中さん。
当時、いろどりで2週間ほどインターンをしていたぼくらは、サミット会場の設営、配布資料セットの作成などの手伝いをした。
これまでの広報の職業柄/経験上、気になるのか、申し込みをしなかったメディアの人たちの入場を拒む主催者の上勝町役場と、メディアの人たちの調整を、なぜかぼくがしていた。そんな思い出もある。
【2011年の「第17回 棚田サミット」は徳島県上勝で開催されたときのポスター】
今年の第18回の棚田サミットは、つい先週末の10月19日から20日の2日間、熊本県で開催していた。地元の新聞によると530人もの出席者がサミットに参加したそうだ。
ちなみに、「日本の棚田百選」の134カ所のうち、11カ所もの棚田が熊本にあり、“ライステラス・キングダム”となっている。
そんなビックイベントが上勝で開催されていた。そう、上勝は“棚田の町“でもあるのだ。
【徳島県上勝町 第17回棚田サミット 地元の小学校が「棚田へ行こう」の曲を披露した。県知事 飯泉嘉門(いいずみ かもん)さんも登壇】
ぼくらは棚田サミット開催前、「樫原の棚田」のオーナーの一人 竹中さん宅へ行き、お手伝いをし、知り合ったのだ。
サミット前に「樫原の棚田」周辺の清掃をする必要があったので、竹中さんと一緒に棚田の側にある道の掃除や、棚田に有機肥料となる稲藁(いねわら)を敷き詰めた。
竹中さん宅の庭からの眺めは最高だ。お昼には、お孫さんたちと一緒に、お餅入りのモチモチしたお好み焼、ボウゼの姿寿司をご馳走になった。(ボウゼは徳島弁でイボダイ、関東では、エボダイと呼ばれているそうだ)
【「樫原の棚田」 第17回棚田サミット開催前に棚田周辺をお掃除】
竹中さんは旦那さんの家に嫁いだ30年前、初めて田んぼでの耕作を始めたそうだ。その当時、牛も飼育していた。
今では冷蔵庫などあらゆる電化製品を使っているが、その当時、電化製品はほとんど使わず、薪火で炊飯するなど、エネルギーのベースは薪が中心だった。
【徳島県上勝町「樫原の棚田」 長年薪生活をしていた竹中さん。写真はぼく自身。徳島県神山町で撮ったもの】
今でも自然の火で温める薪風呂を使っているそうだ。
田舎へ行き、何度か、薪生活をする人たちと出会ったが、薪風呂は体の芯まで温まる。
薪料理は、料理を作るための“熱”を自身で熾すところから始めることから、独自で料理をしたぞ!という、料理の楽しさと美味しさを味わえる。
これは実際、自身でやってみないとわからない感覚だと思う。
竹中さん宅でご馳走になったモチモチしたお餅入りのお好み焼き。棚田サミット開催前に竹中ファームへ行き、棚田周辺のお掃除を手伝い、お昼にはお好み焼きをご馳走になった
竹中さんは農作業など、もろもろすごく忙しそうなのだが、人柄なのだろうか…のんびりゆとりある日々を過ごしているような雰囲気をもった人で、日々のライフスタイルが楽しそうにみえた。
棚田での耕作、お茶摘み、ユコウなどの柑橘類、葉っぱのいろどりの農作業など、季節や天候によって、様々な仕事「私事」があり、日々自然と顔合わせして、異なる毎日を過ごす。
夏は棚田などでの農作業、冬は夜なべしながら、いろどりの仕事をするそうだ。
畑での体力仕事、天候で耕作地が荒らされることなど、きつい仕事も多々あるのだと思うが、この対自然の作業というのは、これまで都会中心で育ったぼくらにとっては、日々発見がありそうで“なにか”楽しそうである。
毎日が“なんとなく”繰り返されルーチン化した生活ではない対自然のライフスタイル。
【徳島県上勝町 – 「樫原の棚田」 竹中ファーム ここも映画「人生、いろどり」のロケ地の一つ。竹中さん宅(標高550メートル)でご馳走になったモチモチしたお餅入りのお好み焼き。こんな景色が良いところで…お昼。いいよね】
たまに旅行へも行くそうだ。3年前には、3回も北海道へ行ったそうだ。
3月ごろの網走(あばしり)の流氷、大鷲(おおわし)、アザラシなどを見たり、摩周湖(ましゅうこ)、富良野(ふらの)のラベンダー、オシンコシンの滝へも行ったそうだ。
去年は「棚田サミット」で忙しかった竹中さんだったが、今回ぼくらが訪れたときは、県外から翌日、「樫原の棚田」を見学する人たちが来るそうで、そのための準備をしていた。
「樫原の棚田」の上の方に位置する「炭の古道」入口付近から「樫原の棚田」へと歩き、棚田について説明をするための予行練習にぼくらも同行した。徳島大学出身のいろどりのインターン生も竹中さん宅にいた。
「樫原の棚田」をさらに上へとのぼる。そこには「炭の古道」がある。
「炭の古道」とは、樫原から高丸山(たかまるやま)(山頂1438メートル)をつなぐ山道で、はるか昔から明治・大正時代まで、山でつくった炭を、勝浦町まで運ぶための道だった。
山奥に棚田を作った昔の人もすごいが…炭を山奥で焼いて、それを20キロぐらい離れた勝浦町まで運んでいたとは…それもすごいことである。昭和に入って、県道が整備され、「炭の古道」は使われなくなっていったが、ブナ林の山道、絶景スポットがあり綺麗だそうだ。
ちなみに「樫原の棚田」には、一休みできるトイレ、テーブル、ソファーがある小屋の休憩所がある。ここから見る棚田の眺めも“新鮮”で、翌朝ここで起きることができたら本当に気持ちが良いだろう…っと思ってしまう。
「樫原の棚田」にある道をさらにのぼって行くと、ぼくらが二度目に上勝へ来た時に行ったことがある、苔が岩の表面にフワフワとじゅうたんのように生え神秘的な雰囲気をつくりだしている山犬嶽(やまいぬだけ)がある。
「炭の古道」は「樫原の棚田」西側で、山犬嶽は北側へと上った場所に位置している。
山犬嶽へは、日本で最も長い林道「剣山スーパー林道」の起点を越えたあたりの道からも入れる。高丸山へは県道16号をまっすぐ行き「千年の森」からも行ける。
【徳島県上勝町「樫原の棚田」の10月下旬】
その他、この地域の秋葉神社(あきばじんじゃ)には、夏の日の真夜中に、東から出てくる月が3体に分かれて見える、と江戸時代から言われている「三体の月」伝説がある。
“ちょい”情報だが、「樫原の棚田」あたりでは、ドコモはつながるが、ソフトバンクの電波はない。AUはぎりぎり電波があるそうだ。
【徳島県勝浦郡上勝町 – 樫原の棚田で育った子ども「案山子(かかし)」たち】
さて、ぼくらはこれから、映画「人生、いろどり」の石本花恵(富司純子さん)が経営する雑貨屋さんへ向かう。ここは雑貨屋さんなのに、“今上勝で噂のカレー”が食べられるとのことだ。
っと、その前に…せっかく「樫原の棚田」や「棚田サミット」など、「棚田」の話しになったので、次回は2011年10月30日に遡って、このサミットの棚田活用術セミナー「棚田で料理教室」の「銀座百楽(ぎんざひゃくらく)」の廣田福也(ひろた とみや)さんから学んだ「美味しいお米の炊き方」を載せようと思う。
ぼくらのような田舎バックパッカー、クルマ田舎旅人、キャンパーの飯盒(はんごう)でも活用できる技の一つだ。(続きはこちら)
「第17回 棚田サミット」開催期間中に、美味しいお米の炊き方や、徳島ふるさとの味 そば米汁の作り方を学んだ。実にニッチなイベントだが、内容は盛り沢山だった。
<次回のストーリー: 『新米の季節…棚田だらけの上勝町で学んだ「美味しいお米の炊き方」』>
<前回のストーリー: 『映画「人生、いろどり」ロケ地 上勝町の「樫原の棚田」で「田舎で仕事」と「食料の自給」について“ふと”考える – 三話目』>
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